
この記事を書いたのは...

- 近畿大学 3年生
- 兒玉 尚子
皆さん株式会社フェニックスバイオをご存知ですか?PXBマウスという、マウスの肝臓が人間の肝臓に70%置き換わった、ヒト化動物を使った研究を行っています。
PXBマウスはキメラマウスの一種です。キメラマウスというのは、二種類以上の遺伝子を持っているマウスのことで人工的につくられます。PXBマウスは肝臓の部分が人の肝臓に変わっているため、人の遺伝子を持ちます。
キメラマウスを扱う会社は他にもありますが、器官が70%以上入れ替わっているマウスを扱っているのは世界でフェニックスバイオだけです。このPXBマウスを使うことで、人間に投与した時と同様の結果が推測できます。
そして、そのPXBマウスを使って医薬品の開発を行っています。会社のある場所は、鏡山のサイエンスパークです。広島大学と近い位置にありますね。実は、フェニックスバイオと広島大学は関係性があるのです。
それを交えながら、フェニックスバイオの強みにせまりました。
広島大学発のベンチャー企業

株式会社フェニックスバイオに至るまでの歴史
株式会社フェニックスバイオの成り立ちを知っていますか?なんと、広島大学の研究から始まりました。
広島大学名誉教授の吉里 勝利(よしざと かつとし)先生<広島大学大学院理学研究科 生物科学専攻>が中心となり、①器官形成、②形態情報、③再構築という大きく分けて3つの研究グループがありました。その中に、今のフェニックスバイオの事業に繋がっている肝臓の研究も含まれていました。
研究が進むにつれて、③再構築グループで肝臓や毛髪の再生を中心に研究を行うようになりました。その後、事業化を目的として、特殊免疫研究所などの出資により、エピフェニックス(フェニックスバイオの前身)が設立されました。
そして、ヒト肝細胞を有するマウスを医薬品開発に利用することを目的とした今のフェニックスバイオへと成長を遂げていったのです。(写真2を参照)
設立してからも苦労がたくさんあったそうです。資金面や人材面など多くの困難がありました。会社設立時からいらっしゃる方々に当時を振り返っていただいたところ、皆さん海外の色々なところへ営業をしにいったそうです。
相手にされない時代もありましたが、小さいチャンスを逃さないようアンテナを張って次につなげていきました。
現在では、世界で活躍するフェニックスバイオ。常に先頭を走れるように、誰もやっていないことをやっていくことを目標に掲げています。一つの大学の研究室から自分たちで道を切り開いていくトップランナーとして世界に発信し続けていることは凄いですね。
しかし、フェニックスバイオの凄さはこれだけではありません。
断トツの論文数

学会発表を行っている向谷さんです。論文も発表します。
フェニックスバイオの研究開発部ではPXBマウス・PXB-cellsの 新規利用方法として、薬物代謝系 、肝毒性試験系 、NASHモデル系 、癌モデル、Body on a chip の研究開発に取り組んでいます。
ですが、研究したらそれで終わりでは困りますよね。フェニックスバイオはB to Bの会社ですので、研究結果を取引先や企業へ発表することが必要になります。その手段として論文が用いられます。
今回は、研究グループ時代から働いている向谷 知世(むかいだに ちよ)さんに語っていただきました。
向谷さんは、いくつもの論文を書いている論文のスペシャリストです。『向谷』と言う名を聞いたら同分野の研究職の皆さんは会いたがるほどの人物なんですよ!
そんな向谷さんですが、出版社に提出してもreject(拒否)されてしまうこともあります。雑誌社の内容に合っていない論文や内容が足りない論文です。
ですがそんな時でも、めげずに仕上げる強い心を持ち続けていたそうです。落ち込んでいても仕方がない、そういう性格だとおっしゃっていました。反省をしながらも次へ切り替えることは社会人にとって大事なことだと感じました。
フェニックスバイオは、キメラマウスを使った研究の論文の多さは、キメラマウスの研究では断トツのとのこと。研究を理解してもらうことで認められたりするとおっしゃいました。
インタビューではこれからもずっと「論文は書き続けたい」と強い意思で語ってくださいました。供給が大事!?

PXBマウスです。体に異常がないか、検査を通じて確認しています。
フェニックスバイオは、マウスを高品質かつ安心して供給することができます。これは、難しいことです。
まず、需要を考えてみましょう。一個の臓器(人の臓器)が入っているのは、世界中でPXBマウスしかないため、唯一無二の存在です。通常イヌやサルで投与実験しても、結果はその動物の場合であるため、ヒトの場合は推測するしかありません。ですが、キメラマウスは、まるごとヒトの臓器が入っているため、ヒトの場合と同じ症状が結果として得られます。そのため、高品質であると言えます。次に供給を考えてみましょう。需要と供給の関係で考えると、商品を必要としている人に売ること(需要)の方をみている会社が多いです。しかし、安定的にマウスを供給することができないと、販売や研究することに支障が出てきます。安定してマウスを供給することは、研究をする会社にとっても大事なことですね。
供給が大事だというお話を聞いて、確かに利益に目が行きやすいけれど、土台となる部分がしっかりしていないと動くこともできないと感じました。それができているフェニックスバイオだからこそ、世界で活躍するマウスを生産できているのだと思います!
取材後記
身近にある会社が実は大学発のベンチャー企業ということ、世界で活躍していることにとても驚きました。
さらにそれだけではなく、会社の強みが複数種類あり社員の方々が堂々とお話されていたので誇らしさがあるのだと感じました。フェニックスバイオの社員の方は、広い視野を持っているからこそ、小さなチャンスをも逃さないことにつながっているのだと思い、とても勉強になりました。 (兒玉 尚子)
企業/団体情報
企業/団体名 | 株式会社フェニックスバイオ |
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代表者 | 藏本健二 |
所在地 | 広島県東広島市鏡山三丁目4番1号 |
公式サイトURL | http://phoenixbio.co.jp |
求人サイトURL | http://phoenixbio.co.jp/company/recruit.html |